ブロックチェーンに対する期待と実態の乖離
発行年 : 2021年
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsim/41/1/41_28/_pdf/-char/ja
内容
- ブロックチェーンには中央集権的な管理組織は存在せず、相互に監視し合うことで改ざんを防いでいる
(ルパン三世の劇場版で、銭形警部がお宝を透明な気球に乗せて、ルパンからの盗難を防ぐシーンとブロックチェーンの仕組みを著者は結びつけている。) - データ改竄を見つけるのに都合がいいため、ブロックチェーンはハッシュ関数を使用
- 参加者が多いと、改竄の辻褄合わせに多量の労力と時間を要するため、改竄するのではなく監視する側にいるのが合理的となる
- しかし、現時点ではブロックチェーンは普及したとは言い切れない、ユースケースは多数あるものの、インセンティブ設計とビジネスプロセスとの結合、2つの理由で普及していないのではないか
所感
- ブロックチェーンは持て囃された一方で、確かに普及していないと実感する
- 自身の領域であるサプライチェーンの領域でも使えると謳われていたが、結局モノになったケースを見たことがない
- ビジネスプロセスとの結合という指摘は個人的には目から鱗だった。何かしらの企業がブロックチェーンをビジネスに活用したいと思っても、その企業の中にはブロックチェーン上に存在していないシステムが存在している、ブロックチェーンと社内システムのインタフェースが攻撃者に狙われるのでは?ということである
- 実際に社内を見渡すと、スクラッチで作ったレガシーシステムが数多く残っている、それらがブロックチェーン上の仕組みと問題なくつながるのか?と思うと、疑問を持たざるを得ない
ニュース分析 : 米インフレ抑止法の中身を調べてみた
ネットに落ちている調査レポートを読んだ記録のために、本ブログを記載していましたが、米インフレ抑止法はEVに与える影響が大きいので、ニュースを調べてみました。
拙い英語力で読解しているため、解釈に誤解があるかもしれません。ご理解願います。
<参照元>
https://www.congress.gov/bill/117th-congress/house-bill/5376/text
<概要>
- EV含むClean VehicleでにおいてTotal$7500の税額控除
- 控除を受けるための前提条件は以下
- 車両価格 : Passenger vehicle MSRP $55000以下 / Truck $80000以下
- 車両原産地 : North Americal(おそらくNAFTA圏)
- 年収 : $150,000/year以下(世帯主等、条件によって年収制約は上がる)
- バッテリーComponents / Mineralの原産地規制
- 特に複雑なバッテリーComponents / Mineralの原産地規制は以下の通り
- CBS newsの記事では、バッテリー条件を除く条件の達成で$3750の控除獲得、残りはバッテリーの原産地規制達成で獲得と記載されていた。しかし、BCGの分析資料や法案原文を見る限り、そうではなさそう。バッテリーのMineral / Componentsの達成でそれぞれ$3750を獲得出来るように解釈している。
<所感>
- 控除額最大額の$7500は非常に大きい。$7500分のインセンティブ予算を削れたとしたら、その分車両装備に予算を充てることもできるので、顧客にとっても非常に魅力的な政策であると思う。
- ただし、現状中国無しでEVサプライチェーンを構築することは非常に難しい。この控除額獲得条件を満たす車両が2023年以後に出てくるかは非常に怪しい。これから出てくるであろうEV新車の戦略に非常に大きな影響を与える。
- アメリカとFTAを結んでいる鉱物資源産出国は、カナダ、チリ、オーストラリア、ペルーぐらいだと思われる。リチウムは意外とボトルネックにならず、コバルト、ニッケル、グラファイトがボトルネックになるように見える。
- CATLやBYDといったバッテリーメーカーがバッテリー原産条件を全て満たして、アメリカでバッテリー組み立てを実施したら、これは条件に見合うのか非常に気になる。中国資本が入っていたらダメなのだろうか?
- 最近ドイツの首相がカナダを訪問していたが、このインフレ抑止法を踏まえて、ミネラルの確保をしているように思える。ミネラルだけでもなく、コンポーネントもNAFTA圏組み立てが必要となる。となると、ミネラルも取れ、コンポーネント組み立て条件が合致するカナダが鍵となるのでは?
中国におけるBEV普及・海外進出加速に示唆される日本自動車産業の未来
発行組織 : ローランドベルガー東京オフィス プリンシパル 鮑睿杰氏
発行日 : 2022年8月25日
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内容
- 中国ではNEVが大きく成長し、自動車産業の牽引役
- 政府によるナンバープレートや補助金施策などで伸びていたが、それだけではなく高コスパ性やデザイン、充実したインフォテインメントにて顧客の支持を掴んでいる
- 中国EV OEMの最初の進出先としては、欧州ノルウェー。高いEV需要率が要因。
- 日本企業への示唆
- 民間・政府主導での事業環境整備
- 海外進出を前提にした製品開発
- 新たなデジタルデバイスとしての定義
所感
- BYDは中国国内で激しく成長しているし、日本への進出も含め海外進出が活発。総論としては理解出来る。
- 欧州もノルウェーのようなEV先進国があることに加え、欧州OEMのEVスタートダッシュが遅れたこともあり、中国系メーカーにとっては狩場のような環境だったと思える。
- 日本自動車産業への示唆は幾分か違うのかなと感じる、日本の自動車産業は軽自動車・ミニバンを除けば、ほぼ海外市場を見て製品開発をしている。というより、海外で稼いでいるので、海外市場を見て製品開発をしている傾向が強い。EVも同様に海外市場を見て、すでに製品開発をしていると予想する。
- 自動車を新たなデジタルデバイス・コネクティビティデバイスとして定義する必要があると思うが、それはEVに限る話ではないと思う。EV/ICE関係無しに、自動車を通じた顧客体験をどう構築していくのか、新しい絵姿を示す必要があるのではと思う。
- 新しいビジョンを示すという意味では、ソニーとホンダの協業は何かしてくれるのでは?というわくわくした気持ちになる。
中国自動車業界レポート(2022年7月)
発行組織 : みずほ銀行
発行日 : 2022年8月22日
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https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/economics/others/pdf/R425-0071-XF-0103.pdf
内容
-
2022年7月は中央・地方政府両者による自動車消費促進策により、台数が大きく伸長
- 9月に向け、自動車販売は好調な季節となるので、8月・9月も好調が予想される
- 中国から海外への輸出も前年同月比+6割超えといった大きな伸長を見せる
- 前年同月比較でみれば、6月実績同様にBYDが前年比+170%以上といった脅威的な伸長を見せている
所感
- 中国におけるEVの伸長は引き続き半端ない。どのICEブランドからも満遍なくシェアを奪っている印象。
- ICEブランドとしては、広汽トヨタが前年対比で伸長。半導体対応がうまくいっているのか?
- 日系3強では日産がシェアを落とし、衰退傾向にあるように思える。特にSUVでのエクストレイル導入が奮っていないように見える。
- BYDは中国での勢いを日本に持っていけるのか注視をしたい、ただモデルの写真を見る限りだと、野暮ったいデザインのように思えてしまう。もう少しシュッと出来るような。
マーケティングにおける混雑の影響-近年の混雑感知覚研究の展開と課題-
発行日 : 2022年6月30日(J-Stage公開日)
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/42/1/42_2022.037/_pdf/-char/ja
内容
- 過去10年間の間に行われた混雑知感覚に関する研究をレビューしたもの
- 混雑は人の購買活動に正負両面で影響を与える
- スーパーが混んでる→ストレスを感じる
- ディスコやクラブが混んでる→賑わっていると感じる
- オランダの小売チェーンを対象にした調査では以下がわかった
- 混雑感を高く感知した消費者は快楽感の高い商品やナショナルブランドを購入する傾向が高まる
- 混雑によるストレスはパーソナルスペースが狭まることで発生すると考えられる。人が多いことにより社会的繋がりも生まれるため、混雑をポジティブに捉える人もいる。
所感
- 混雑の捉えた方は個々人によって大きく異なると思われる。タスク的に買い物をする人にとっては混雑はストレスでしかないし、社会的な繋がりを求める人にとってはポジティブなものである。
- 混雑感を個々人にちょうどよく知覚させ、個々人の購買体験をさらに豊かにするような取り組みは出来ないか? 待たない程度での程よい混雑は、満足につながるのでは?
- 混雑していると待たされたりして、それが不満につながる。一方で閑古鳥が鳴いていると、この店大丈夫なのか? 自分の購買行動オワコン?といったレピュテーションへの不安につながる。
駅広告からみた首都圏鉄道駅の中心機能に関する一考察
著者 : 青島 光太郎(筑波大・学)
発行日 : 2022年3月(2022年度日本地理学会春季学術大会にて)
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajg/2022s/0/2022s_70/_pdf/-char/ja
内容
- JR山手線駅および山手線から放射状に伸びる路線の東京都内鉄道駅においてホームから目視出来る看板広告を調査し、看板広告から都市構造を明らかにしようと試みたもの
- 商圏が狭い業種の広告は地域を問わず確認可能
- 一方で、商圏が広い業種の広告は、都心部の駅に集中
所感
- 広告の分布から都市構造を明らかにしようとする試みはユニークで面白いと感じた。
- 商圏が広い業種は、費用対効果を最大限にしようと都心部の駅に集中的に広告を打つのは合理的だと思う。
- 物理的な商圏という概念が存在しないインターネットビジネスも人の目に触れ、話題になりやすい同様に都心部の駅に集中するのだと思う。最近では、品川駅の大通路のスクリーンをジャックするベンチャー企業も散見するが、この法則に当てはまると考える。
- おそらく広告を打っている方達は、このように分析されているとは思いもしないだろうが、彼らなりの合理的な方針に基づいて動いているため、このように一定のルールがあるように説明されるのは何だか面白いと感じた。